2009-12-05

内と外(5)

田中史生「越境の古代史」を読んだ。
これこそ歴史教科書だという気がする。記述が生きている。
何よりも表面的な日本の歴史にこれまで登場しない様々な人物がいきいきと見えるのはなぜだろう。
著者も導入部で述べているように、まさしく内なる日本という国家概念がまずありきで記述される歴史ではいかに味気ないものかがこの書物を読むと実感される。
内と外の記録の照合という単純な作業を愚直に行い、現地で事実を確認することがいかに説得力のあるものとなるかというすばらしい見本だろう。
日本の学問の水準がこうして中国、韓国などの学者との交流を経て充実していくのはわくわくするような期待をもたせる。真実はひとつだし、確認できる事実は少ないが、しっかりと地に足の着いた学問というのは着実な成果を挙げるものだということをこの書物は示してくれる。